「雨の日に荷物が濡れて作業が止まる」「夏の暑さで作業効率が落ちる」「本格的な倉庫を建てる予算も時間もない」このような現場の課題に、頭を悩ませていませんか?
製造業や物流業の現場では、荷捌き作業の効率化が収益性に直結します。特に天候による作業中断や、夏場の作業環境悪化は、生産性と従業員の安全衛生に大きな影響を及ぼします。
本記事では、こうした課題を解決する上屋テントについて、導入メリットから選定ポイント、法規制まで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
\上屋テントを設置する際のポイント/
目次
1.上屋テントとは?
上屋テントとは、鉄骨造のフレームにテント生地を張った構造物で、側面の全部または一部が開放された膜構造建築物です。「荷捌きテント」とも呼ばれ、工場や倉庫の荷捌き場、トラックヤードなどで広く活用されています。
従来の固定建築物と比べて、上屋テントは鉄骨とシートのシンプルな構造により、短工期・低コストでの設置が可能です。側面がオープンな設計のため、大型トラックやフォークリフトの出入りがスムーズで、作業動線を妨げません。高さは最大13メートルまで設計可能で、ウィング車のサイドパネルを全開にした状態での積み下ろしや、クレーン作業にも対応できます。
用途は荷物の積み下ろしや一時保管、作業スペースとしての利用が中心ですが、工場間の通路屋根や、出荷待機商品の仮置き場としても活用されています。
従来の屋外荷捌き場では、雨が降り出すたびに作業を中断したり、製品を雨ざらしにしたりするリスクがありました。
上屋テントを導入すれば、トラックからの荷物の積み降ろし、出荷前の最終確認、一時保管中の製品などが雨に濡れる心配がなくなります。これにより、雨天時でも作業を中断することなくスムーズに継続でき、製品の品質低下や作業効率の低下を防ぐことができます。
上屋テントは、壁がないオープンな構造のため、車両の出入りが非常に容易です。特に、大型トラックやウィング車が頻繁に出入りする荷捌き場において、その効果は絶大です。
上屋テントは、一般的な建物に比べて柱のスパン(間隔)を広く取ることができ、大型ウィング車のサイドパネルを全開にして、クレーンやフォークリフトがスムーズに乗り入れ、作業を行える柱のない広大な空間を作り出すことができます。さらに、開閉式テント(可動式)を採用すれば、クレーン作業時や急な搬出入時は屋根を開放し、通常の荷捌き作業や一時保管時は屋根を閉めるといった、固定建築物には不可能なフレキシブルな運用が可能になります。
高さは設計次第で最大13メートル程度まで対応可能ですが、規模や地域により構造計算の難度が変わるため、事前に専門業者に確認が必要です。
これにより、荷下ろし・積み込みの時間が大幅に短縮され、物流の停滞を解消します。
夏の炎天下での屋外作業は、作業効率が低下するだけでなく、熱中症リスクが非常に高まります。
上屋テントのテント生地は高い遮熱性を持ち、直射日光を遮ります。さらに、壁がないため風通しがよく、熱気がこもる心配がありません。これにより、テントの下のWBGT(暑さ指数)を低減し、作業員の熱中症対策に大きく貢献します。
冬場は風や雪を防ぐことで、凍結による転倒リスクも軽減されます。
工場や倉庫の敷地内には、既存の建物の間、変形した土地、高低差がある場所など、有効活用しにくいデッドスペースが存在することがあります。
上屋テントは、完全オーダーメイド設計が可能なため、いびつな形状のスペースや、既存の建物に隣接した通路などにも柔軟に対応できます。工場と工場を結ぶ「ブリッジ」としての通路屋根としても設置でき、製品の移動時に雨に濡れることなく、デッドスペースを作業空間や仮置き場として生まれ変わらせることが可能です。
事業拡大や縮小、生産拠点の移転など、企業を取り巻く環境は常に変化します。上屋テントは鉄骨とテント生地のシンプルな構造のため、比較的容易に移設や撤去が可能です。
固定建築物と異なり、賃貸物件での一時的な使用にも適しており、将来的な事業所移転を考慮した柔軟な設備投資として活用できます。また、事業縮小時には解体して他の拠点で再利用することも可能で、投資の無駄を最小限に抑えられます。
テント生地は10年程度で張り替えが必要ですが、鉄骨フレームは適切なメンテナンスにより長期使用できるため、ライフサイクルコストも抑制できます。
上屋テントの導入を成功させるには、現場のニーズに合致した製品を選ぶことが不可欠です。ここでは、具体的な選び方と検討事項を解説します。
最も一般的な上屋テントで、鉄骨フレームにテント生地を固定した構造です。側面は全開放、または1~3面に壁やカーテンを設置できます。常設の荷捌き場や作業スペースとして、安定した雨よけ・日よけ効果を発揮します。
構造がシンプルで施工費用を抑えられ、メンテナンスも容易です。大型トラックの頻繁な出入りがある物流センターや、製造工場の出荷場に最適です。
屋根部分のシートを開閉できるタイプや、キャスター付きで移動可能なタイプがあります。開閉式は天候や季節に応じて開放度を調整でき、採光や換気のコントロールが可能です。
移動式は土地を最大限活用したい場合に有効で、繁忙期と閑散期で使用場所を変更できます。必要な時だけ屋根を使いたい場合や、柔軟な運用をしたい場合に最適です。
既存建物の壁面から片側だけで支える構造で、建物前面の荷捌きスペースに適しています。柱が片側にしかないため、車両の出入りがさらにスムーズになります。
既存の倉庫の壁に隣接させて設置し、荷捌き場側を完全に開放したい場合に最適です。
ただし、構造上の制限により、張り出し幅には限界があります。また、既存建物の強度確認が必要で、建物との接合部の雨仕舞いに注意が必要です。
導入前に最も重要なのは、使用する車両と作業内容に基づいた適切な寸法の決定です
テント生地は使用環境と目的に応じて選定します。
シート生地は防汚処理の有無によっても耐久性が変わります。粉塵の多い環境や海岸近くの立地では、防汚性能の高いシートを選ぶことで、メンテナンスサイクルを延長できます。
作業の利便性や環境改善のため、オプションを検討します。
上屋テントは、従来の鉄骨造建築物と比較して、初期投資を大きく抑えることが可能です。
具体的な費用は設置場所(風速、積雪量)や寸法、選ぶ生地、基礎工事の有無によって大きく変動するため、一概には言えません。しかし、目安としてテント倉庫よりも安価になるケースが多く、小規模なものであれば数百万円台から導入が可能です。 導入を検討する際は、複数の業者から見積もりを取り、費用対効果(作業効率改善による人件費削減、製品ロス防止など)を総合的に判断することが重要です。
工期についても一般的な倉庫建設が数ヶ月〜半年以上かかるのに比べ、上屋テントは1週間〜数週間と圧倒的な短工期です。
上屋テントの導入において、安全かつ適法に利用するためには、建築基準法の知識が不可欠です。法規制について正確に理解し、導入計画を進めましょう。
上屋テントは建築基準法第2条第1項に定める「建築物」に該当するため、原則として建築確認申請が必要です。「テント」という名称から簡易な構造物と誤解されがちですが、土地に固定され、屋根と柱を有する以上、建築物として扱われます。
建築確認申請では、建築基準法、消防法、都市計画法などの法令に適合しているかが審査されます。膜構造建築物である上屋テントは、国土交通省告示第666号または第667号の技術基準に従う必要があります。
ただし、上屋テントは倉庫用途に限定されないため、多くの場合は第666号の基準が適用されます。第667号は倉庫用途に特化した緩和基準ですが、側面が開放された上屋テントは該当しないケースが一般的です。
申請手続きは、建築主または設計者が役所もしくは民間の指定確認検査機関に提出します。構造計算書、設計図書、使用するテント生地の防炎性能証明書などが必要です。専門的な知識を要するため、通常は施工業者が代行します。
【出展:日本膜構造協会|国土交通省告示第666号/国土交通省告示第667号】
建築基準法では「防火地域・準防火地域外で、増築・改築・移転する場合に限り、10m²以下の建築物であれば申請が不要になることがある」という規定があります。
しかし、上屋テントの設置は、多くの場合、既存の建物への「増築」ではなく独立した「新築」と見なされます。また、そもそも多くの工場・倉庫が建つ工業地帯でも防火地域等に指定されているケースは少なくありません。したがって、「10m²以下だから申請しなくて良い」という判断は非常に危険な誤解であり、違法建築に繋がりかねないため、規模に関わらず専門業者に相談することが必須です。
令和5年4月1日に施工された建築基準法施行令の改正により、物流倉庫等に設ける大規模な庇に関する規制が緩和されました。これは、上屋テントを検討する際の新たな選択肢として注目されています。
従来、庇は外壁から1メートルを超える部分が建築面積に参入されていましたが、改正後は以下の要件を満たす場合、5メートルまで建築面積に不算入となりました。
①工場または倉庫の用途に供する建築物で、専ら貨物の積卸し等の業務のために設ける庇であること
②庇の全部が不燃材料で作られていること(※)
③庇から敷地境界線までの距離が、突き出た方向で5メートル以上あり、かつ庇の高さが敷地境界線までの距離以下であること
④庇の上に上階を設けないこと
➄不算入となる庇の合計面積が、敷地面積の10分の1以下であること
(※)一般的な上屋テントで利用されるのは「防炎シート」であり、「不燃材料」ではありません。不燃材料(ガラス繊維系シートなど)は高価であり、開閉式には向かないものも多いため、通常の防炎シートを使用する計画では、この緩和は適用されません。
この改正により、建ぺい率の制約を受けにくくなり、大規模な庇を設置しても倉庫本体の面積を確保しやすくなりました。上屋テントを検討する際には、この不燃材料の採用を含めて、設計業者と大規模庇の基準活用を相談することが重要です。
【出展:国土交通省|建築基準法施行令の一部を改正する政令(令和5年政令第34号)について】
上屋テントは、低コスト・短納期で「雨濡れによる作業停滞」「大型車の動線問題」「熱中症リスク」を解決する極めて効果的なソリューションです。
導入を成功させるには、大型車両に対応できる適切な寸法の確保と、現場の課題に合わせた最適なタイプの選定が二大成功要因となります。特に建築確認申請は原則必要であり、令和5年法改正による最新の基準を順守するためにも、経験豊富な専門業者に相談することが不可欠です。
現場の課題解決、コスト削減、そして社員の安全を守るため、まずは専門業者に相談し、現場の状況に合わせた最適なプランと正確な見積もりを取得することから始めましょう。
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荷捌き上屋・開閉式テントの製品紹介ページ