「うちの工場、どうしてこんなに暑いんだ…」「空調がなかなか効かないな…」
工場や倉庫の管理者様、設備ご担当者様の中には、毎年のように繰り返される夏の過酷な暑さに対して、
といったお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
その「原因不明の暑さ」、もしかしたら「輻射熱(ふくしゃねつ)」が大きく影響しているかもしれません。
本記事では、工場や倉庫の暑熱環境改善に取り組む皆様に向けて、輻射熱の基本的な原理から、工場特有の影響、暑さ指数(WBGT)を用いた測定の重要性、そして科学的根拠に基づいた効果的な対策、特に「遮熱」という考え方について詳しく解説します。この記事を読むことで、輻射熱を正しく理解し、より快適で安全な作業環境を実現するための一歩を踏み出しましょう。
\「輻射熱とはなにか?」のポイント/
まず、熱の伝わり方には大きく分けて3つの種類があることをご存知でしょうか。それは「熱伝導」「対流」そして「輻射(放射熱)」です。
輻射熱の最大の特徴は、熱伝導や対流と異なり、間に熱を伝える物質(空気など)がなくても、真空中でも熱エネルギーが移動する点です。太陽の熱が宇宙空間を通って地球に届くのもこの輻射熱のおかげです。また、輻射熱は空気を直接温めるのではなく、物体に当たった際にその物体を温めます。そのため、「放射熱」とも呼ばれます。
実は、建物全体の熱移動のうち、約75%は輻射熱によるものだと言われています。このことからも、工場や倉庫の暑さ対策において、輻射熱をいかにコントロールするかが非常に重要であることがわかります。
工場や倉庫は、その構造や用途から、輻射熱の影響を特に受けやすい環境と言えます。主な熱源としては、屋根や壁、そして意外と見落とされがちな機械設備や生産工程そのものが挙げられます。
特に金属製の折板屋根や外壁は、夏場の強い日差しを受けると表面温度が非常に高くなり、強力な輻射熱源となります。太陽光によって熱せられた屋根や壁から放射される輻射熱が、工場内の床や機械などの物体に吸収され、それらの温度を上昇させます。そして、輻射熱によって温められた物体が、今度はその熱を周囲の空気に伝える(熱伝導や対流によって)ことで、結果的に工場内の室温が大きく上昇するのです。この屋根からの輻射熱対策については、弊社の既存コラム「工場内が暑くなる原因は屋根からの輻射熱にあり!工場の暑さ対策とは」でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
屋根や壁だけでなく、工場内で稼働している生産機械、炉、モーター、照明器具なども大きな輻射熱源となり得ます。また、高温の製品や材料そのものからも輻射熱は発生します。これらの熱源は、作業者のすぐ近くにあることも多く、体感温度をさらに押し上げる要因となります。
これらの多様な熱源から放射される輻射熱が複合的に作用することで、工場内の温度はますます上昇します。そのため、単純な換気やスポット的な空調だけでは、なかなか効果を実感しにくいという状況が生まれてしまうのです。
輻射熱は目に見えませんが、作業者の体感温度や熱中症リスクに直接的な影響を与える脅威です。この影響を客観的に評価するために用いられるのが「暑さ指数(WBGT)」です。
輻射熱は、空気の温度だけでなく、人体や周囲の物体の表面温度を直接上昇させます。これにより、実際の気温以上に暑さを感じたり、熱中症のリスクが高まったりするのです。
では一体暑さ指数とはなんでしょうか?厚生労働省のサイトでは次のような定義が説明されています。
暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。労働環境や運動環境などにおける熱ストレスを評価するために用いられ、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、②日射・輻射など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標です。
引用:熱中症予防情報サイト、「暑さ指数とは?」https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
WBGTを算出する際には、気温、湿度に加えて「黒球温度」が重要な要素となります。この黒球温度は、黒く塗られた薄い銅板の球の中心に温度計を入れ、太陽光や地面、建物などからの輻射熱を計測するものです。特に、屋内外の作業環境においては、この輻射熱がWBGT値に大きな影響を与えることが知られています。オプションとして、サーモグラフィカメラを用いることで、物体表面の温度を可視化し、輻射熱の影響を視覚的に捉えることも有効です。
厚生労働省は、WBGTの基準値を示し、熱中症予防対策を推奨しています。工場や倉庫の管理者は、WBGT値を定期的に計測し、その結果を厚生労働省が示す基準値と比較することで、作業スケジュールの調整、適切な休憩時間の導入、水分補給の奨励といった具体的な熱中症予防策を計画的に実施できます。これにより、従業員の安全確保はもちろん、快適な作業環境による生産性の維持・向上にも繋がります。輻射熱を適切に管理することは、WBGT値を低減し、安全な作業環境を実現するための重要なポイントとなります。
では、工場や倉庫を暑さから守るために、輻射熱に対してどのような対策が有効なのでしょうか。ここで重要になるのが、「遮熱」と「断熱」という2つの考え方です。
前述の通り、建物内の熱移動の約75%は輻射熱によるものです。そのため、輻射熱対策は非常に重要です。
一般的に「断熱材」は、熱伝導や対流による熱の移動を遅らせる効果があります。例えるなら、布団や魔法瓶のように、熱が伝わりにくくすることで保温・保冷効果を発揮します。しかし、輻射熱に対しては、断熱材自体が熱を吸収してしまい、やがてその熱を再放射するため、輻射熱そのものを防ぐ効果は限定的です。
一方、「遮熱材」、特にアルミ箔などを使用した遮熱シートは、輻射熱(電磁波)を反射することで、熱の侵入や移動を防ぎます。鏡が光を反射するように、輻射熱をはね返すイメージです。
太陽光による屋根からの熱や、高温の機械設備からの熱など、強力な輻射熱源が多い工場や倉庫のような環境では、熱を反射して侵入を防ぐ「遮熱」という考え方が特に効果的です。断熱材と遮熱材を組み合わせた「遮断熱」という考え方もあり、それぞれの特性を理解して適切に使い分けることが重要です。
その他、屋根に散水して気化熱を利用する方法や、放射冷却素材を活用する方法などもありますが、これらは遮熱とは異なる原理で作用します。
これまで解説してきた輻射熱の科学的な原理と、工場・倉庫におけるその影響、そして対策の考え方を踏まえると、輻射熱対策に特化したソリューションの有効性が見えてきます。そこでおすすめしたいのが、BXテンパルが提供する遮熱シート「はるクール」です。
「はるクール」は、まさに輻射熱対策のために開発された製品です。
「はるクール」は、高純度のアルミ箔などの高反射素材を使用しており、太陽からの輻射熱や工場内の機械などから発生する輻射熱を最大97%反射します。この97%という高い反射率は、性能試験を実施して得た評価データに基づいています。熱の侵入や蓄積を大幅に抑制する効果が期待できます。
「はるクール」を導入することで、これまで述べてきた工場・倉庫の課題解決に貢献します。
本記事では、「輻射熱とは何か」という基本的な問いから、その科学的原理、工場や倉庫における特有の熱源と影響、WBGTを用いた客観的な評価方法、そして「遮熱」を中心とした効果的な対策について解説しました。
輻射熱を正しく理解し、適切な対策を講じることは、工場や倉庫の管理者様にとって、従業員の労働安全衛生の確保、生産性の向上、さらには光熱費の削減といった経営課題の解決にも繋がります。
BXテンパルは、遮熱シート「はるクール」をはじめとする製品・サービスを通じて、工場・倉庫の暑熱環境改善をサポートいたします。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
工場や物流倉庫など、産業施設のシート間仕切りを使った問題解決事例をお伝えします。