「休憩所に日よけを設けたほうがよいとは思うものの、何から手をつければよいのかわからない」とお悩みではありませんか。予算もスペースも限られるなかで、どこから着手すべきか判断しづらいという声をいただくことがあります。
職場での熱中症は、年々深刻さを増しています。厚生労働省の確定値によると、2025年に職場で発生した熱中症による死傷者数は1,803人で、統計を取り始めて以来もっとも多い数字となりました。業種別では製造業が365人、建設業が292人と、工場・倉庫・建設現場が大きな割合を占めています。
屋外の休憩場所に日かげをつくることは、こうした状況に対して現場が最初に踏み出せる一手です。順序立てて進めれば、限られた条件のなかでも休憩所を整えることができます。
本記事では、休憩所の日よけをどのような順番で検討すればよいのかを、行政が示す要件、日かげの実際の効果、方法の違い、場所選びと法規の注意点という流れで解説します。ぜひ参考にしてください。
\休憩所の日よけのポイント/
目次
休憩所の暑さ対策と聞くと、まずスポットクーラーや冷水器を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし屋外や半屋外の休憩場所では、機器を入れる前に確かめておきたいことがあります。この章では、日かげづくりが最初の一手になる理由を2つの角度から整理します。
2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、一定の暑熱環境での作業について、事業者に熱中症対策が義務付けられました。対象となるのは、暑さ指数(WBGT)28℃以上、または気温31℃以上の場所で、継続して1時間以上、あるいは1日に4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。
義務付けられたのは、熱中症の自覚症状がある作業者や異変を把握した場合の報告体制を整えること、作業からの離脱や身体の冷却といった措置の内容と実施手順を定めること、そしてそれらを関係者に周知することの3つです。
日よけを備えた休憩所そのものが一律に義務付けられたわけではありません。ただし、作業から離脱した作業者が安全に休める場所を確保することは、熱中症対策を実効性のあるものにするうえで欠かせません。炎天下しか離脱先がなければ、定めた手順は紙の上で止まってしまいます。
出典:厚生労働省「基発0520第6号(令和7年5月20日)」
屋外の暑さは、気温だけでできているわけではありません。環境省の資料によると、真夏の正午に歩道で人が受ける熱量は約900W/m²にのぼり、そのうち日射が約5割強、地面や壁からの赤外放射が約5割弱を占めるとされています。
送風機や冷房は、空気の温度や体表面からの放熱に働きかける設備です。上から降りそそぐ日射そのものを減らすことはできません。屋根や膜で日射を遮ることは、機器では代わりのきかない対策だといえます。だからこそ、休憩所づくりは日かげの確保から始めるのが理にかなっています。
出典:環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン」
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「日かげのある休憩所を用意するように」といわれても、どこまで整えれば足りるのかがわからない、と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。行政の文書に数値基準こそありませんが、要件そのものは意外と具体的に書かれています。
通達では、冷房を備えた休憩場所か、日かげなどの涼しい休憩場所を設けることが示されています。あわせて、その休憩場所は足を伸ばして横になれる広さを確保すること、高温多湿な作業場所の近隣に設けることも求められています。
つまり「日かげがある」「横になれる広さがある」「作業場所から近い」の3点が、休憩場所を点検するときの出発点になります。広さの目安がほしいときは、同時に横になれる人数から逆算すると考えやすくなります。作業環境管理の面では、直射日光と地面からの照り返しを遮る簡易な屋根を設けること、適度な通風や冷房の設備を設けることもあわせて示されています。
出典:厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」
休憩設備そのものについては、労働安全衛生規則第613条が、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならないと定めています。これは努力義務にあたります。一方で、2025年に加わった第612条の2の熱中症対策は義務です。
休憩設備の設置は努力義務、暑熱下での対策手順の作成と周知は義務、という二層構造になっている点が、この分野をわかりにくくしています。実務のうえでは、離脱先としての休憩場所がなければ義務を果たす手順が成り立たない、と考えて整えるのが自然です。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
環境省のマニュアルには、太陽光や高温物体からの赤外線を屋根などで遮り、風通しは確保するように工夫する、という趣旨の記載があります。屋根をかけたうえで四方を囲ってしまうと、熱がこもって思うような効果が得られないことがあります。
暑さ指数の基準値にも、この考え方が表れています。身体作業強度が高い区分では、気流の有無によって基準値が1℃ほど変わります。日かげをつくるときは、上を遮りつつ側面は開けておく、あるいは開閉できるようにしておくと扱いやすくなります。
出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル」
社内で予算を通すには、効果を数字で示す必要があります。ここでは公的機関の実測データをもとに、日かげがもたらす変化を確認します。効果を大きく見せないことが、かえって説得力につながります。
東京消防庁が最高気温35℃・快晴の日に消防学校で行った測定では、日なたの暑さ指数が正午に34.1だったのに対し、日かげは31.0から32.4でした。差はおよそ1.7から3.1です。川崎市環境総合研究所の測定でも、緑陰28.6℃に対して日なた30.4℃と、1.8の差が出ています。
環境省のガイドラインも、木かげに入ると暑さ指数(WBGT)が-2程度低くなる場合があるとしています。数値だけを見ると物足りなく感じるかもしれません。ただし基準値である28℃前後の領域では、-2という差が作業の可否判断を分ける水準にあたります。
出典:東京消防庁「初任学生の熱中症予防方策に関する検証」
同じ測定で、地表面温度は日なたが68℃だったのに対し、日かげは34から38℃でした。差は約30℃です。足元や周囲から返ってくる熱がこれだけ変われば、休憩中に体温を下げやすくなります。
川崎市の測定では、日かげを歩いたときの発汗量が日なたと比べて約60%少ないという結果も出ています。体感温度で見ると、日かげでは7℃程度低くなる場合があるとされています。暑さ指数の-2という数字の背後には、こうした変化があります。
出典:川崎市環境総合研究所「街路樹の緑陰(日陰)による暑熱軽減効果と熱中症予防について」
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日かげのつくり方は一つではありません。ここでは代表的な4つの方法を、基礎工事の要否や風への備え方といった判断軸で整理します。どれが優れているというより、現場の条件によって向き不向きが分かれます。
アウトドア用のテントや、足場材とワイヤーに遮光ネットを張った簡易な日かげです。厚生労働省の事例集にも、足場材の支柱に遮光ネットを張った休憩場所や、重機の作業に対応するため高さを確保したワイヤーと遮光ネットの組み合わせが紹介されています。
初期費用を抑えやすく、工期に合わせて移設できるのが利点です。一方で、毎年の設営と撤去、保管の手間がかかります。強風が予想されるときは畳むか撤去する運用が欠かせません。
出典:厚生労働省「分類別熱中症対策事例 休憩場所の整備」
既存の建屋の外壁に取り付け、庇のように張り出す方式です。工場や倉庫には必ず外壁があるため、独立した柱や基礎を立てずに日かげを広げられる点が特徴といえます。荷捌き場の脇や、建屋沿いの通路を休憩スペースとして使いたい場合に向きます。
開閉できるタイプであれば、強風が予想されるときに畳んでおくことができます。冬場に日射を取り込みたいときや、雨天時の一時的な作業スペースとして使いたいときにも切り替えがきくため、夏の数か月だけの設備になりにくいという特徴もあります。
柱を立てて屋根を設置する、あるいは上屋を建てる方式です。建屋から離れた場所にまとまった日かげをつくれるため、屋外の休憩所を独立して整えたい場合に適しています。
耐用年数が長く、通年で使えるのが強みです。ただし規模によっては建築基準法上の建築物として扱われ、確認申請の対象となる場合があります。計画の早い段階で確認しておくことをおすすめします。
冷房を備えた休憩車や、キャスターの付いたシェードを巡回させる方式です。作業場所が日々動く現場では、休憩場所のほうを動かすという考え方が有効な場合があります。設備を固定できない条件でも、涼しい離脱先を確保することができます。
| 方法 | 基礎工事 | 風への備え | 想定される使い方 |
|---|---|---|---|
| 仮設タイプ | 不要 | 強風時は格納・撤去が前提 | 短期の現場、まず試したい場合 |
| 壁付けタイプ | 不要(外壁の下地確認は必要) | 開閉式なら格納できる | 建屋沿いの休憩スペース |
| 独立・常設タイプ | 必要になる場合が多い | 常設仕様で設計する | 屋外に独立した休憩所 |
| 移動式タイプ | 不要 | 移動して退避できる | 作業場所が日々動く現場 |
設備を入れたのに使われない、という状況は珍しくありません。この章では、場所選びと運用でつまずきやすい3つの点を取り上げます。
通達が休憩場所を作業場所の近隣に設けるよう求めているのは、単なる利便性の話ではありません。休憩所が遠いと、往復の時間を惜しんで休憩そのものが省かれてしまいます。作業場所からの動線と距離を、設置場所を決める最初の条件に据えることをおすすめします。
場所を選ぶときは、午後の西日がどちらから差すか、風がどの向きから吹くか、炉や高温設備からどれだけ離れているかもあわせて確認します。自動販売機や喫煙場所の近くは人が自然に集まるため、休憩所と兼ねると使われやすくなります。
日よけは風に弱いから意味がない、と考える方もいらっしゃるかもしれません。実際には、膜構造には建築基準法にもとづく技術基準が定められており、膜材の厚さや引張強さの要件が示されています。日よけの風対策では、製品の仕様だけでなく、設置場所の風環境や固定方法、日よけのサイズ、強風時の運用まで含めて検討することが欠かせません。
コンクリート面のようにペグが打てない場所では、重りによる固定が欠かせません。可動式であれば、強風が予想されるときに格納するという運用そのものが備えになります。飛散すれば作業者や第三者に危険が及ぶため、現場条件によって異なる部分は専門業者による確認が必要です。
製品の仕様表に並ぶ「遮光率99%」といった数値は、光をどれだけ遮るかを示すものです。試験方法によって値が変わるうえ、熱の入り方を表す日射熱取得率とは別の指標にあたります。
光をよく遮る生地でも、生地自体が熱を吸って下面から放射すれば、日かげの下は思ったほど涼しくなりません。素材を選ぶときは、遮光率だけでなく、日射熱の取得のしにくさ、そして消防法上の防炎性能もあわせて確認するとよいでしょう。
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最後に、計画を進める前に押さえておきたい手続きと費用の話を整理します。いずれも条件によって結論が変わる領域のため、あくまで目安として捉えてください。
建築基準法では、土地に定着する工作物のうち屋根と柱もしくは壁を有するものを建築物と定義しています。屋根をかけて柱を立てれば、建築物として扱われる可能性があります。
増築部分の床面積が10m²以内であれば確認申請が不要になる規定がありますが、これは防火地域および準防火地域以外に限られます。更地に新しく建てる場合は、面積を問わず対象になります。建物の規模・用途・自治体によって判断が分かれるため、計画段階での事前協議が欠かせません。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法」
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消防法では、幕類やテント類、工事用シートなどが防炎対象物品とされています。工事中の建築物その他の工作物で使用する場合も、規制の対象に含まれます。基準に適合する製品には防炎ラベルが表示されるため、選定のときに確認しておくと安心です。
出典:消防庁「防炎の知識と実際」
費用は方法によって幅があります。仮設と常設を比べるときは、初期費用だけでなく、毎年の設営と撤去にかかる手間、買い替えの周期まで含めて考えると判断しやすくなります。屋外の屋根は雨天時の資材置き場や風除けとしても使えるため、通年で活用する前提で見ると、費用の見え方も変わってきます。
熱中症対策には国や自治体の支援制度がありますが、日よけ設備が対象として明記されていない制度もあります。制度の内容は自治体や年度によって異なるため、最新情報は自治体の窓口や制度の事務局にご確認ください。
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休憩所の日よけを何から始めるか、という問いへの答えは、暑さ指数を測って現状を把握することです。2024年に職場で起きた熱中症の死亡災害31件のうち、24件では暑さ指数が把握されていませんでした。測ることが、すべての対策の出発点になります。
出典:厚生労働省「令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」
そのうえで、行政が示す「日かげがある」「横になれる広さがある」「作業場所から近い」の3点で今の休憩場所を点検し、足りない部分を仮設・壁付け・独立常設・移動式のいずれで埋めるかを考えます。遮蔽と通風はセットで整え、風への備えは運用まで含めて設計する。この順序で進めれば、限られた条件のなかでも休憩所を整えることができます。
BXテンパルでは、オーニングや大型サンシェードをはじめとする日よけ製品を扱っています。休憩場所の広さや設置条件、運用の仕方に合わせたご提案をいたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。