「建物の外壁に負荷はかけられないが、開放的で魅力的なテラス空間を作りたい」
これは、多くの施設の設計において直面する課題ではないでしょうか。特に、既存の建物構造や外壁の強度から、壁に固定する従来型のオーニング設置が難しいケースは少なくありません。
この構造上の制約を解決する選択肢として、建築の専門家の皆様から「自立式オーニング」が改めて注目されています。商業施設のテラス席はもちろん、教育施設や公共空間における快適な屋外スペースの創出まで、その活用シーンは広がっています。
本記事では、建築のプロである皆様が自立式オーニングをご検討される際に、判断材料のひとつとしてご活用いただけるよう、「関連法規」「製品選定のポイント」「クライアントへの価値提案」といった情報を整理してご紹介します。
\自立式オーニング計画のポイント/
自立式オーニングをご検討される際、まず市場に品質や目的が大きく異なる2つのタイプが存在することを整理しておくと、製品選定がスムーズになります。
この2つは、耐久性や安全性はもちろんのこと、法律上の扱いや責任の所在が全く異なるため、明確な区別が求められます。両者の本質的な違いを、以下の比較表にまとめました。
業務用 vs. 一般家庭用 自立式オーニング比較表
項目 |
業務用(基礎固定式) |
一般家庭用(簡易設置式) |
主な用途 |
恒久的な日除け・雨除け、空間創造 |
一時的な日除け、手軽な目隠し |
構造・基礎 |
鉄骨・アルミ押出形材、コンクリート基礎 |
軽量アルミ・スチール、突っ張り・重り |
想定耐用年数 |
10年以上(定期メンテナンス前提) |
1~3年程度 |
耐風性能 |
メーカー基準に基づき保証(例:風速10m/s) |
保証なし、強風時即時収納が原則 |
建築確認申請 |
規模・構造により必要となる可能性あり |
原則不要 |
価格帯の目安 |
数十万円~数百万円(工事費別途) |
数千円~数万円 |
主な販売場所 |
専門メーカー、建材ルート |
ホームセンター、通販サイト |
価格差の背景には、プロの仕事に求められる品質、安全性、そして長期間の使用に対する信頼性があります。
自立式オーニングの設計において、慎重な判断が求められるのが関連法規の解釈です。特に建築確認申請の要否は、プロジェクトの進行を大きく左右する重要なポイントになります。
建築基準法では、「建築物」を「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」(第二条第一号)と定めています。自立式オーニングは「屋根(キャンバス)」と「柱(フレーム)」を持つため、原則としてこの定義に該当し、建築物と解釈される可能性があります。
ただし、その構造や用途によっては、「建築物」として扱われないケースもあります。最終的な判断は各自治体の担当部署が行いますが、過去の事例から、建築物と「みなされない」ための主な要件は以下の通りです。
建築物とみなされないための主な要件:
これらの要件を満し、「高い開放性を有し、かつ、用途が限定される簡易な構造物」として認められるかどうかが、行政協議における一つの論点となります。
建築基準法以外にも、設置場所や用途に応じて遵守すべき法規が存在します。
法規に関する不明点を解消する最も確実な方法は、計画の早い段階で所轄行政の建築指導課などに「事前相談」を行うことです。その際、以下の資料を準備することで、協議を円滑に進められます。
私たちBXテンパルにご相談いただければ、数多くの実績に基づき、こうした事前相談の段階からサポートさせていただきます。
ここでは、クライアントの資産と利用者の安全を守るという観点から、製品選定の際に仕様書などでご検討いただきたい技術的なポイントをいくつかご紹介します。
これらの技術要件を満たし、さらに設計者の創造性に応えるのが、BXテンパルの自立式オーニングです。ここでは、具体的なソリューションとして2つの製品をご紹介します。
これまで自立式オーニングの設置には、コンクリートを打設する基礎工事が必須でした。しかし、パーゴラオーニング「ソラカゼ iori」に専用オプション「基礎ブロック式」が加わったことで、設計の自由度は格段に向上しました。
「基礎ブロック式」の主なメリット
もちろん、置き式であっても安全性は確保しています。JIS認定工場で製作された高耐久性のコンクリートブロック(1柱あたり約170kg)を使用し、所定の設計基準を満たしています。
※設置には床面の強度(柱1本あたり約250kgの荷重に耐えること)や勾配(1/50以下)など、諸条件がございます。詳細はお問い合わせください。
1本の支柱から左右両翼にキャンバスが広がる「パルセイル」は、広大なオープンスペースにダイナミックな日除け空間を創出します。
レストランのテラス席やイベントスペースなど、デザイン性と機能性の両立が求められるシーンで、空間のシンボルとなる存在感を放ちます。
自立式オーニングの導入をクライアントにご説明される際に、付加価値としてお伝えいただけるポイントをいくつかご紹介します。施設の課題解決や価値向上に繋がる情報として、ご提案の際にお役立てください。
自立式オーニングの設計は、法規の解釈から構造、デザインまで、多岐にわたる専門知識が求められます。最後に、本記事の要点をチェックリストとしてまとめました。
自立式オーニング設計の要点チェックリスト
これらの課題をクリアし、プロジェクトを成功に導く上で、オーニングに関する専門知識を持つパートナーのサポートが役立ちます。
BXテンパルでは、設計プロセスを円滑に進めるための各種サポート体制を整えています。作図に必要なCADデータや技術資料のダウンロードサービスはもちろん、経験豊富な専門スタッフが、構想段階から竣工まで、あらゆるご相談に対応いたします。
自立式オーニングが拓く、新たな建築の可能性について、ぜひ私たちにご相談ください。
お店の魅力を引きだすオーニングの事例や効果、費用、設置の疑問までを詳しく解説しています。