「新しいラインを増設したいが、隣の工程に粉が流れないか心配」
「レイアウトを変えたあとも、ゾーニングをきちんと説明できるようにしておきたい」とお悩みではありませんか。手洗いや器具の使い分けは徹底していても、空気に乗って広がる粉塵の扱いは、判断に迷うという声をいただくことがあります。
小麦粉や粉乳、医薬品の原料などの粉体は、目に見えにくいまま作業場に広がり、別の製品に入り込む交差汚染の原因になることがあります。HACCPに沿った衛生管理が定着し、アレルゲン管理への関心も高まるなかで、工程どうしをどう区画するかは、品質管理の重要なテーマになっています。
粉が広がる経路を理解し、気流管理や清掃と組み合わせて現場に合った区画手段を選べば、交差汚染のリスクを抑えることができます。
本記事では、食品・医薬品工場の品質管理担当者の方に向けて、粉塵による交差汚染の考え方から、区画手段の比べ方、ビニールカーテンで区画するときの注意点までを解説します。
\粉塵による交差汚染対策のポイント/
目次
7.まとめ
はじめに、本記事で扱う交差汚染の範囲と、粉塵が広がる経路を整理します。手指や器具を介した汚染に比べて、空気を介した経路は意識されにくい傾向があります。
交差汚染とは、汚染度の高いものから低いものへ、微生物や異物、原材料由来の成分が移ってしまうことを指します。医薬品の分野では「交叉汚染」と表記され、ある製品の成分が別の製品に混入することを防ぐ考え方として使われています。
食品のアレルゲン管理では、アレルゲンを含む原料が、それを含む予定のない製品に意図せず入り込むことを「交差接触」と呼んで区別する場合があります。いずれの場合も、粉体は手指や器具だけでなく、空気に乗って移動する点に注意が必要です。
粉の広がり方を示すデータとして、東京都多摩立川保健所が行った実験があります。ボウルのふちの高さから1kgの小麦粉を5分間かけてふるったところ、開始後0〜5分では1〜2mの範囲に、5〜30分では4m離れた位置でも小麦が検出されました。
出典:東京都多摩立川保健所「食物アレルギー防止対策の推進について」(第9回東京都福祉保健医療学会 抄録)
給食施設を想定した実験ではありますが、粉体を扱う工程の数m先に別の工程がある工場では、参考になる結果です。舞い上がった粉は時間をかけて離れた場所に落ちるため、作業台の配置だけで分けたつもりでも、空気の経路が残っている場合があります。
既設の工場でレイアウトを変えたりラインを増やしたりすると、これまで保たれていたゾーニングのバランスが変わることがあります。ここでは、変更時に見直したい2つの観点を整理します。
ラインを増設すると、人や台車の通り道が変わり、汚染区域から清潔区域へ向かう動線が生まれることがあります。あわせて見落としやすいのが空気の流れです。設備の配置が変わると、空調の吹出口や吸込口との位置関係が変わり、粉が流れる向きも変わる可能性があります。
後から仕切りを入れる場合も同じで、区画したことで空調の効き方や部屋どうしの圧力の関係が変わる場合があります。区画を計画するときは、仕切りの位置だけでなく、設備担当者と一緒に気流の変化まで確認しておくことが大切です。
食品衛生法の施設基準(共通基準)では、作業区分に応じて「間仕切り等により必要な区画」がされること、工程を踏まえて設備が配置されること、または空気の流れを管理する設備が設置されることが求められています。あわせて、動線の設定や交替使用時の洗浄消毒などで衛生管理措置が講じられている場合は、この限りでないとするただし書もあります。
出典:厚生労働省「施設基準の全体像」
浜松市保健所の資料では、従来は壁・扉によるものとされていた区画が、改正後は腰壁やエリア分け等でも認められると説明されています。壁を立てることだけが区画ではなくなった一方で、どの手段が認められるかは施設の状況によって判断されるため、レイアウト変更の計画段階で所轄の保健所に相談しておくことをおすすめします。
出典:浜松市「食品営業許可の施設基準が改正されます!」
粉塵による交差汚染は、ひとつの手段だけで抑えきれるものではありません。発生源、気流、区画と時間という3つの層を重ねて考えると、それぞれの手段の役割が見えやすくなります。
もっとも効果が出やすいのは、粉が舞い上がる場所で抑えることです。計量や投入、ふるいといった工程に局所排気や集じん装置を設けることで、作業場全体に広がる量を減らすことができます。投入の高さを低くする、袋の開け方を工夫するといった作業手順の見直しも有効です。
清掃の方法も見直したいポイントです。食品アレルゲン管理に関する国際規範(Codex)では、乾燥した食品の残りかすを取り除くときは、圧縮空気ではなくスクレイパーやブラシ、掃除機を使う必要があるとされています。エアブローは粉を再び舞い上げ、別の区域へ運んでしまうおそれがあるためです。
出典:厚生労働科学研究「食品事業者のための食品アレルゲン管理における実務規範(CXC 80-2020)」和訳
一般に、清潔度の高い区域の室圧を高くし、空気が清潔区域から汚染区域へ流れるようにする考え方がとられています。ただし粉体を扱う部屋は、製品を守る部屋であると同時に、粉を外へ出してはいけない部屋でもあります。そのため、計量室などを周囲より低い圧力にして粉の漏れ出しを防ぐという考え方もあり、どちらを優先するかは工程や製品によって異なります。
医薬品の無菌製造に関する指針では、区域の間で扉を閉じた状態で10〜15Pa以上の差圧を維持することが望ましいとされています。こうした数値は扉で閉じられた部屋を前提としたもので、差圧を厳密に管理する区域は、空調設備側で設計するのが基本です。
出典:厚生労働省 事務連絡「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」の改訂について
前述のCodexの規範では、異なるアレルゲンを含む食品を同時に加工する場合に、ライン間に壁、パーティション、カーテンといった適切なバリアを設けるか、間隔をあけて分けることを検討するよう示されています。カーテンも、交差接触を抑える手段のひとつとして挙げられています。
空間で分けることが難しい場合には、アレルゲンを含まない製品を先に製造し、切り替え時に洗浄するといった時間による区分もあります。区画と時間による区分を組み合わせることで、限られたスペースでもリスクを下げることができます。
区画の手段には、床のライン表示から固定壁まで段階があります。どれが優れているかではなく、現場で求める区画性能に合っているかという視点で比べることが大切です。
| 区画手段 | 主な役割 | 気流・差圧の管理 | 工期・変更のしやすさ |
|---|---|---|---|
| ライン表示・色分け | 区域を見える化し、動線を守る | 対応しにくい | 短い・変更しやすい |
| ビニールカーテン | 粉の飛散を抑え、区域を分ける | 補助的(すき間が残る) | 比較的短い・再配置しやすい |
| パネル・パーテーション | 区域を物理的に分ける | 開口部の扱いによる | 中程度 |
| 固定壁・前室 | 部屋として分ける | 差圧管理と組み合わせやすい | 長い・変更しにくい |
ライン表示は手軽ですが、空気の流れは止められません。固定壁や前室は区画性能が高い一方で、工期や費用がかかり、次のレイアウト変更で動かしにくくなります。ビニールカーテンはその中間にあり、空気を完全に止めることはできませんが、粉の飛散を抑えながら、工事を抑えて区画できるという特徴があります。
比較するときは、次の3つの軸で整理すると、社内での説明もしやすくなります。
・粉の性状と製品リスク:粉の細かさや発生量、扱う原料がアレルゲンかどうか
・求める区画性能:区域の見える化か、飛散の抑制か、差圧の維持まで必要か
・工期と運用:稼働を止められる期間、今後の再配置、賃借物件の原状回復
たとえば、アレルゲンを含む粉体の計量エリアと隣接ラインの間では飛散の抑制が主な目的になり、発生源対策とあわせてビニールカーテンで囲う方法が検討しやすくなります。差圧の維持まで求められる区域では、固定壁と空調設備の組み合わせを前提に考えるとよいでしょう。
医薬品の場合、GMP省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)で交叉汚染の防止が定められています。飛散しやすく、微量で過敏症反応を示す製品等を扱う場合には、作業室を専用とし、空気処理システムを別系統にするなどの措置が求められます。
出典:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(PMDA掲載)
こうした区域では、ビニールカーテンが専用化や空調の別系統化の代わりになるものではありません。一方で、原料の保管区画や包装工程の周辺など、作業エリアを分けて整理したい場面では活用の余地があります。適用できる範囲は製品や工程によって異なるため、社内の品質保証体制のなかで判断することが大切です。
ビニールカーテンを選ぶ場合は、設置のしかたと日々の管理によって効果が大きく変わります。ここでは、計画時に確認しておきたい3つの点を整理します。
カーテンで区画すると、天井との間、裾と床の間、カーテンどうしの合わせ目にすき間が残りやすくなります。天井付近まで覆うのか、裾を床からどの程度上げるのかは、清掃のしやすさと飛散の抑制のバランスで決めることになります。
開閉方式は、人や台車の通過頻度に合わせて選びます。通過の多い開口部では、のれん状のカーテンを使うと出入りしやすくなりますが、通るたびに空気が動く点も考慮が必要です。排気設備を動かすとカーテンが吸い寄せられる場合もあるため、給気と排気のバランスもあわせて確認しておきましょう。
樹脂製のシートは静電気を帯びやすく、粉が付着することがあります。付着した粉は、開閉の振動や段取り替えのときに落ちて、別の区域へ運ばれる可能性があります。ビニールカーテンには帯電防止の性質を持たせたシートもありますが、静電気を逃がしやすくする性質であって、粉を寄せ付けないわけではありません。労働安全衛生総合研究所は、帯電防止加工品は接地によって静電気を逃がす方法をとっているため、接地が必要としています。
出典:労働安全衛生総合研究所 安衛研ニュース No.123「過信は禁物! 静電気対策」
カーテン自体が汚染源にならないよう、清掃の頻度と方法、使用できる洗剤、交換の目安を手順として決めておくと安心です。清掃や点検の記録を残しておけば、監査や取引先への説明にも役立ちます。
間仕切りを設けると、感知器が反応しにくい場所ができたり、スプリンクラーの散水を妨げたりする場合があります。広島市消防局は、飛沫防止用シートについて、散水障害や感知器の未警戒部分が生じないように、また避難の支障とならないように設置するよう注意を呼びかけています。工場でカーテンを設ける場合も、同様の視点で配置を確認することが大切です。
出典:広島市消防局「飛沫防止用シート 火災や消防法違反に注意」
防炎性能を持つカーテンの使用義務は、建物の用途や設置場所によって異なります。判断が分かれるため、計画の段階で所轄の消防署に確認しておくことをおすすめします。
▶工場のビニールカーテンと消防法についてはこちら
BXテンパルの「間仕区(マジック)」シリーズは、工場・倉庫の空間課題をシート製品で解決する、セミオーダーの間仕切りビニールカーテンです。ここでは、粉塵の区画分けを検討する際に役立つ特徴をご紹介します。
間仕区(マジック)は、「ほしい機能」と「設置場所」を選ぶことで、仕様とタイプが決まる仕組みです。屋内・透明タイプは、粉塵などが発生する作業エリアや研磨・切削作業エリアをおすすめの用途としており、作業の様子を見通せる状態を保ちながら区画することができます。強度を重視した糸入りシートと、見通しを重視した糸なしシートから選ぶことができ、いずれも防炎認定品です。
▶粉塵の発生源を囲うシート製ブースについてはこちら
粉体を扱う作業エリアだけでなく、医薬品工場の原料保管区画などをおすすめの用途とする屋内・不透明タイプや、0℃以下でも柔軟性を保つ屋内・低温タイプ(耐寒性はマイナス30℃の試験値)もあります。工場内の区域ごとに異なる条件に、シリーズのなかで対応しやすい点が特徴です。
現場調査、仕様提案、製造、施工、メンテナンスまでをBXテンパルが一貫して担当します。寸法が決まっていない段階でもご相談いただけ、テナント倉庫の原状回復にも配慮します。規格化されたシート製品のため、見積から施工までの時間短縮が見込めることも、稼働を止めにくいライン増設の場面では利点になります。粉の性状や気流の状況は現場ごとに異なるため、現地を確認したうえで最適な仕様をご提案いたします。
▶工場のビニールカーテン施工事例についてはこちら
粉塵による交差汚染は、手指や器具だけでなく、空気を介して広がる点に特徴があります。レイアウト変更やライン増設のときは、動線とあわせて気流の変化を確認し、発生源対策、気流管理、区画と時間による区分を組み合わせて考えることが大切です。
区画手段は、粉の性状と製品リスク、求める区画性能、工期と運用の3つの軸で比べると選びやすくなります。ビニールカーテンは空気を完全に止めるものではありませんが、すき間や清掃、消防設備への配慮とあわせて計画すれば、工事を抑えながら粉の飛散を抑える区画として活用することができます。
▶ビニールカーテンの導入ガイドについてはこちら
BXテンパルでは、現地調査から仕様提案、施工まで一貫して対応しています。工場の区画分けやビニールカーテンの導入を検討される際は、お気軽にご相談ください。