自立式オーニング計画のポイント【デザイナー・設計者向け】

「建物の外壁に負荷はかけられないが、開放的で魅力的なテラス空間を作りたい」
これは、多くの施設の設計において直面する課題ではないでしょうか。特に、既存の建物構造や外壁の強度から、壁に固定する従来型のオーニング設置が難しいケースは少なくありません。
この構造上の制約を解決する選択肢として、建築の専門家の皆様から「自立式オーニング」が改めて注目されています。商業施設のテラス席はもちろん、教育施設や公共空間における快適な屋外スペースの創出まで、その活用シーンは広がっています。
本記事では、建築のプロである皆様が自立式オーニングをご検討される際に、判断材料のひとつとしてご活用いただけるよう、「関連法規」「製品選定のポイント」「クライアントへの価値提案」といった情報を整理してご紹介します。
\自立式オーニング計画のポイント/
- POINT1
- 「法規」と「技術」、双方の観点から検討しましょう!
- POINT2
- 計画段階でのお悩みは、お気軽にご相談ください!
1.自立式オーニング市場の2つのタイプ
自立式オーニングをご検討される際、まず市場に品質や目的が大きく異なる2つのタイプが存在することを整理しておくと、製品選定がスムーズになります。
- タイプA:業務用「基礎固定式」
コンクリート基礎などを用いて地面に恒久的に固定するタイプです。十分な構造計算に基づき、高い耐風性能と長期的な耐久性を確保した製品です。建築設計に組み込まれるのは、主にこちらのタイプとなります。
- タイプB:一般家庭用「簡易設置式」
ホームセンターや通販サイトで販売されている、突っ張り棒や重りで固定するタイプです。一時的な日除けを目的としており、業務用に求められる構造的な安全性や耐久性の基準を満たすものではありません。
この2つは、耐久性や安全性はもちろんのこと、法律上の扱いや責任の所在が全く異なるため、明確な区別が求められます。両者の本質的な違いを、以下の比較表にまとめました。
業務用 vs. 一般家庭用 自立式オーニング比較表
項目 |
業務用(基礎固定式) |
一般家庭用(簡易設置式) |
主な用途 |
恒久的な日除け・雨除け、空間創造 |
一時的な日除け、手軽な目隠し |
構造・基礎 |
鉄骨・アルミ押出形材、コンクリート基礎 |
軽量アルミ・スチール、突っ張り・重り |
想定耐用年数 |
10年以上(定期メンテナンス前提) |
1~3年程度 |
耐風性能 |
メーカー基準に基づき保証(例:風速10m/s) |
保証なし、強風時即時収納が原則 |
建築確認申請 |
規模・構造により必要となる可能性あり |
原則不要 |
価格帯の目安 |
数十万円~数百万円(工事費別途) |
数千円~数万円 |
主な販売場所 |
専門メーカー、建材ルート |
ホームセンター、通販サイト |
価格差の背景には、プロの仕事に求められる品質、安全性、そして長期間の使用に対する信頼性があります。
2.設計時にご検討いただきたい関連法規
自立式オーニングの設計において、慎重な判断が求められるのが関連法規の解釈です。特に建築確認申請の要否は、プロジェクトの進行を大きく左右する重要なポイントになります。
自立式オーニングと建築基準法
建築基準法では、「建築物」を「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」(第二条第一号)と定めています。自立式オーニングは「屋根(キャンバス)」と「柱(フレーム)」を持つため、原則としてこの定義に該当し、建築物と解釈される可能性があります。
ただし、その構造や用途によっては、「建築物」として扱われないケースもあります。最終的な判断は各自治体の担当部署が行いますが、過去の事例から、建築物と「みなされない」ための主な要件は以下の通りです。
建築物とみなされないための主な要件:
- 高い開放性: 壁で四方を囲まれておらず、容易に人が通り抜けられるなど、開放性が極めて高いこと。
- 用途の限定: 居住、執務、作業、集会といった、継続的に人が滞在する用途ではないこと。
- 簡易な構造: 構造体やキャンバスが容易に撤去・収納できること。
これらの要件を満し、「高い開放性を有し、かつ、用途が限定される簡易な構造物」として認められるかどうかが、行政協議における一つの論点となります。
関連法規チェックリスト
建築基準法以外にも、設置場所や用途に応じて遵守すべき法規が存在します。
- ☐ 消防法
防火地域・準防火地域において、建築物には耐火性能が求められます。オーニングが建築物にあたるかどうかは行政へ事前の確認が必要です。 - ☐ 道路法・道路交通法
敷地境界を越えて、歩道や車道の上空にオーニングがはみ出す場合は、道路占用許可が必要です。設置可能な高さにも制限があるため、事前に道路管理者への確認が不可欠です。 - ☐ 景観条例
特定の地域では、景観を保護するために工作物のデザインや色彩に規制が設けられている場合があります。地域の景観条例を事前に確認し、必要に応じて行政との協議を行います。
実践的アドバイス:行政への「事前相談」について
法規に関する不明点を解消する最も確実な方法は、計画の早い段階で所轄行政の建築指導課などに「事前相談」を行うことです。その際、以下の資料を準備することで、協議を円滑に進められます。
- 配置図、立面図、平面図
- 製品の仕様がわかるカタログや技術資料
- 想定される用途や運用方法(常設か、開閉式かなど)を明記した書類
私たちBXテンパルにご相談いただければ、数多くの実績に基づき、こうした事前相談の段階からサポートさせていただきます。
3.製品選定で押さえるべき技術的なポイント
ここでは、クライアントの資産と利用者の安全を守るという観点から、製品選定の際に仕様書などでご検討いただきたい技術的なポイントをいくつかご紹介します。
- 「強度」の確認:耐風性能と基礎工事
「強度」は、最も重要な選定基準の一つです。「耐風性能(例:風速10m/sまで対応)」の数値をご確認ください。この数値は、製品が安全に使用できる風速の目安を示します。また、その強度を最大限に発揮するためには、地盤の状態や地域の基準風速を考慮した適切な基礎工事が不可欠です。製品本体だけでなく、基礎の仕様まで含めてご計画いただくことが重要です。 - 材質の選定:フレームとキャンバスの耐久性・メンテナンス性
フレームの材質は、主にアルミ押出形材とスチール(鉄骨)に大別されます。アルミは軽量で耐食性に優れ、スチールは強度と設計自由度の高さが特長です。キャンバスには、防炎性、防水性、防汚性、UVカット性能など、様々な機能があります。長期的な美観と機能性を維持するため、メンテナンス性も選定のポイントとなります。 - 機能性とデザイン:開閉方式や意匠への貢献
開閉方式は、手動と電動があります。施設の運用方法に合わせてご選択いただけます。近年では、風や雨を感知して自動でキャンバスを収納するセンサーなど、安全性を高めるオプションも充実しています。自立式オーニングは、単なる日除け設備ではなく、ファサードの意匠を構成する重要な要素です。フレームの色彩やキャンバスの質感が建物とどう調和するか、空間の価値をいかに高めるかという視点も、プロジェクトの成功に繋がります。
4.BXテンパルのソリューション:設計の可能性を広げる製品群
これらの技術要件を満たし、さらに設計者の創造性に応えるのが、BXテンパルの自立式オーニングです。ここでは、具体的なソリューションとして2つの製品をご紹介します。
新提案:基礎工事不要で設置できるパーゴラオーニング「ソラカゼ iori 基礎ブロック式」
これまで自立式オーニングの設置には、コンクリートを打設する基礎工事が必須でした。しかし、パーゴラオーニング「ソラカゼ iori」に専用オプション「基礎ブロック式」が加わったことで、設計の自由度は格段に向上しました。
「基礎ブロック式」の主なメリット
- 基礎工事が不要に
最大の特長は、地面を掘削する基礎工事が不要になる点です。これにより、地下に埋設物がある場所や、アスファルト・コンクリートを撤去できない場所にも設置が可能になります。工期の短縮やコスト削減にも繋がります。 - 移設・再組立が可能
置き式のブロックなので、将来的なレイアウト変更の際には、製品を解体して移設・再利用することが可能です。 - 柔軟な設置プラン
基礎ブロックは、柱に対する配置を複数パターンから選択できます。壁際に寄せて設置したり、柱の内側のスペースを有効活用したりと、現場の状況に合わせた柔軟な納まりを実現します。
もちろん、置き式であっても安全性は確保しています。JIS認定工場で製作された高耐久性のコンクリートブロック(1柱あたり約170kg)を使用し、所定の設計基準を満たしています。
※設置には床面の強度(柱1本あたり約250kgの荷重に耐えること)や勾配(1/50以下)など、諸条件がございます。詳細はお問い合わせください。
ダイナミックな空間を創出する両翼独立駆動オーニング「パルセイル」
1本の支柱から左右両翼にキャンバスが広がる「パルセイル」は、広大なオープンスペースにダイナミックな日除け空間を創出します。
レストランのテラス席やイベントスペースなど、デザイン性と機能性の両立が求められるシーンで、空間のシンボルとなる存在感を放ちます。
5.クライアントへのご提案にお役立ていただける視点
自立式オーニングの導入をクライアントにご説明される際に、付加価値としてお伝えいただけるポイントをいくつかご紹介します。施設の課題解決や価値向上に繋がる情報として、ご提案の際にお役立てください。
- 「新たな価値ある空間」の創造
- 商業施設: テラス席を増設し、天候に左右されにくい空間とすることで、客席の稼働率向上や、施設の収益向上に繋がる可能性があります。
- 福祉・教育施設: 強い日差しや急な雨を気にすることなく、園児や利用者が安全に屋外活動を楽しめるスペースを確保できる、という点も価値のひとつです。
- 省エネ・SDGsへの貢献
オーニングによる外部遮熱は、室内の温度上昇を効果的に抑制し、空調負荷の削減に貢献します。BXテンパルと研究機関との共同研究では、体感温度を最大7℃下げるというデータも得られています。施設のランニングコスト削減だけでなく、企業のSDGsへの取り組みとして社会的な価値をご提案いただくことも可能です。
- 長期的な視点:メンテナンスとライフサイクルコスト
初期投資だけでなく、長期的なメンテナンスプログラムの有無や、製品の耐用年数を含めたライフサイクルコスト(LCC)をお示しいただくことで、クライアントの長期的な視点での投資判断をサポートできます。
6.まとめ
自立式オーニングの設計は、法規の解釈から構造、デザインまで、多岐にわたる専門知識が求められます。最後に、本記事の要点をチェックリストとしてまとめました。
自立式オーニング設計の要点チェックリスト
- ☐ プロが扱うべき「基礎固定式」の製品か?
- ☐ 建築確認申請について、行政への事前相談の準備はできているか?
- ☐ 消防法、道路法、景観条例など、関連法規はクリアしているか?
- ☐ 耐風性能、材質、基礎仕様など、製品の技術要件は仕様を満たしているか?
- ☐ 収益向上や省エネ効果など、クライアントへの投資対効果を言語化できているか?
これらの課題をクリアし、プロジェクトを成功に導く上で、オーニングに関する専門知識を持つパートナーのサポートが役立ちます。
BXテンパルでは、設計プロセスを円滑に進めるための各種サポート体制を整えています。作図に必要なCADデータや技術資料のダウンロードサービスはもちろん、経験豊富な専門スタッフが、構想段階から竣工まで、あらゆるご相談に対応いたします。
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