倉庫や工場の暑さ対策!暑さ対策のポイントを解説

工場や倉庫は熱がこもりやすく、夏場は室温が40℃~50℃に達する可能性があります。作業場所の温度が上昇すると、従業員の熱中症のリスクや、電気設備機器の故障や誤動作のリスクが高まるため、倉庫や工場の暑さ対策・遮熱対策が重要です。この記事では、倉庫や工場が暑くなるメカニズムや、従業員の暑さ対策、機材の遮熱対策について解説します。
1.工場や倉庫が暑くなるメカニズム
空調設備が十分でない場合、真夏の工場や倉庫は室温が40℃~50℃に達する可能性があります。
なぜ工場や倉庫は気温が高くなりやすいのでしょうか。工場や倉庫が暑くなりやすい理由は以下の通りです。
● 金属製の折板屋根が直射日光で熱せられ、放射熱を放射するため
● 間仕切りのない場合、空調が効きにくいため
● 空調設備が老朽化している建物が多いため
● コンテナやトラックなどが出入りし、外気が流入しやすいため
とくに工場や倉庫の室温に大きな影響を与えるのが、金属製の折板屋根が放射する放射熱です。
暑さに困っている建物の多くは、折板屋根の下に仕切りや断熱材がなく、折板屋根の放射熱が室内に直接伝わる構造になっています。
真夏の折板屋根は、直射日光によって70℃~80℃に熱せられることもあるため、工場や倉庫の室温がどんどん高くなってしまいます。
工場や倉庫の暑さを緩和するには、折板屋根の放射する熱の対策が必要不可欠です。
2.暑さを感じるメカニズム
構造上気温が高くなりやすい工場や倉庫では、従業員の熱中症のリスクも高まります。
実際に熱中症の死傷者数を業種別に見ると、令和2年度の製造業における死傷者数は全体の第2位となる199人、運送業は第3位の137人でした。
[注1]しかし、熱中症は「必ず防げる災害」です。[注2]人間が暑さを感じるメカニズムを知り、きちんと対策を行えば、熱中症は事前に防止することができます。 厚生労働省は「職場における熱中症予防に関する講習会」において、熱中症を以下のように定義しています。
[注1]
熱中症:高温多湿な環境下において、体内の水分・塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称。 また、熱中症は重症度によって、I度(めまい、立ちくらみ、大量の発汗など)、II度(頭痛、嘔吐、倦怠感など)、III度(意識障害、肝・腎機能障害、血液凝固異常など)に分類されます。 しかし、工場や倉庫の気温が高くなりやすいからといって、作業者が必ず熱中症になるわけではありません。 工場や倉庫の気温が上昇し、作業者が暑熱にさらされても、汗の蒸発による気化熱や、冷えた外気による熱放射により、体温上昇を妨げれば熱中症を予防できます。 熱中症は「必ず防げる災害」ですが、同時に「対策を怠ったり、適切な処置を行わなければ現代の最新医療でも救えない」重篤な災害でもあります。 【参照】厚生労働省:令和2年職場における熱中症による死傷災害の発生状況 https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000774750.pdf |
[注2]
工場や倉庫で働く従業員の熱中症リスクを可視化するには、WBGT(暑さ指数)を測定することが大切です。 【参照】厚生労働省:熱中症が発生する仕組みとそれに基づく有効な対策 https://neccyusho.mhlw.go.jp/pdf/2020/2020_data_ueno.pdf |
3.人間の猛暑限界 WBGTとは
WBGT(暑さ指数)は、職場での熱中症予防のためにアメリカで考案された「人体にとっての暑さ」の指標です。
環境省はWBGTを以下のように定義しています。[注3]
[注3]
暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標です。 WBGTの単位は気温と同じ摂氏度(℃)ですが、気温だけでなく湿度や輻射熱も考慮されているため、WBGTを測定することで熱中症のリスクを可視化できます。 厚生労働省は工場や倉庫、工事現場などで働く従業員を対象として、身体作業の強度に応じたWBGT基準値を定めています。 【参照】環境省:暑さ指数(WBGT)について https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php |
建物内にWBGTを測定する機器を設置し、WBGT基準値を超えていないか定期的にモニタリングすることが大切です。 【参照】 厚生労働省:熱中症を防ごう! https://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/06/dl/h0616-1b.pdf |
区分 | 身体作業の強度 | WBGT基準値 | |
---|---|---|---|
熱に順化している人 | 熱に順化していない人 (作業する前の週に毎日熱にばく露されていなかった人) |
||
安静 | 安静 | 33℃ | 32℃ |
低代謝率 | 楽な座位 立位 軽い手作業 手や腕を使う作業 ちょっとした歩き(3.5km/h) など |
30℃ | 29℃ |
中程度代謝率 | 継続的に腕を使う作業 腕や胴体を使う作業 荷車や手押し車を押したり引いたりする作業 3.5~5.5km/hの速さで歩く など |
28℃ | 26℃ |
高代謝率 | 腕や胴体を使う強度の作業 重い材料を運ぶ作業 シャベルを使う作業 のこぎりを引く作業 コンクリートブロックを積む作業 5.5~7.5km/hの速さで歩く など |
気流を感じないとき:25℃ 気流を感じるとき:26℃ |
気流を感じないとき:22℃ 気流を感じるとき:23℃ |
極高代謝率 | 最大速度の速さで激しく活動する場合 斧を振るう作業 激しくシャベルを使ったりほったりする作業 階段を登ったり走ったりする作業 7km/hより速く歩く など |
気流を感じないとき:23℃ 気流を感じるとき:25℃ |
気流を感じないとき:18℃ 気流を感じるとき:20℃ |
4.工場・倉庫の暑さ対策方法(従業員側)
工場・倉庫の暑さ対策は、大きく分けて「従業員の暑さを和らげ、快適に働くためのもの」「建物内の気温を下げ、暑熱環境を改善するもの」の2種類があります。
この2つの暑さ対策を組み合わせて実施することで、従業員の熱中症や設備機器の故障を効果的に防ぐことが可能です。
まずは、従業員側の暑さ対策として「空調服」「アイスベスト・クールベスト」の2点を紹介します。
空調服
空調服は小型のファンを内蔵した作業服です。
衣服の内部に風が送り込まれ、気化熱によって体内の熱を放出できるため、従業員の暑さを和らげることができます。ただし、ホコリや粉塵が舞う作業環境では、内部のファンが故障するリスクがあります。
アイスベスト・クールベスト
アイスベスト(クールベスト)とは、衣服のポケットに保冷剤を入れられる作業服です。
空調服が使えない作業環境でも、アイスベストやクールベストなら利用できます。インナータイプのアイスベストなら、空調服と併用することで、より効率的に体温を下げることが可能です。
5.工場・倉庫の暑さ対策方法(施設側)
次に工場や倉庫の気温を下げ、暑熱環境を改善するための対策方法を紹介します。
前述の通り、工場や倉庫が暑くなる最大の要因は、金属製の折板屋根が放射する放射熱です。
折板屋根に遮熱材・遮熱シートを施工すれば、根本的な暑さ対策を実現できます。また、建物内の空調効率を高めるには、間仕切りカーテンやシートブースの設置が効果的です。
→工場・倉庫の間仕切り製品一覧はこちら
遮熱材・遮熱シート
遮熱シート(遮熱材)とは、建物の屋根などに施工し、工場や倉庫内の温度上昇を抑えるための設備です。
とくに折板屋根の工場や倉庫の場合、放射熱を反射させる遮熱シートを屋根の下に施工することで放射熱による室温の上昇を効果的に防ぐことができます。
設置環境によっては、夏場の遮熱効果だけでなく、冬場の断熱効果・保温効果も期待できます。
遮熱材には塗装タイプのものもありますが、傷や経年劣化によって遮熱効果が低下するため、定期的な施工が必要です。
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スポットクーラー
スポットクーラーは、通常の業務用エアコンと違い、建物内の気温を局所的に下げるための空調設備です。
たとえば、建物内に放射熱を放出するボイラーや乾燥炉などの熱源設備がある場合、付近にスポットクーラーを設置すれば、室温の上昇を防ぐことができます。
スポットクーラーは室外機がないため、設置工事が不要なのもメリットです。
大型扇風機
大型扇風機は、一般家庭用の扇風機よりも風速・風量が大きな扇風機です。
大型扇風機を導入すれば、工場や倉庫の内部の空気を効率的に循環させることができます。
大型扇風機と空調設備と併用し、冷風を建物内にすばやく行き渡らせる使い方が一般的です。
間仕切りカーテン・シートブース
間仕切りカーテン(シートブース)とは、建物の内外に設置し、簡易的に間仕切りをつくるための設備です。
工場や倉庫は間仕切りがない建物が多く、空調が効きにくいという特徴があります。間仕切りカーテンやシートブースを設置すれば、間仕切りができるため空調効率が高まり、省エネにもつながります。
ビニール製の間仕切りカーテンなら、作業者の視界を遮らないため、作業の邪魔にもなりません。
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6.はるクールの紹介 性能
工場や倉庫の暑さ対策なら、屋根からの放射熱を反射する「はるクール」の導入がおすすめです。
はるクールは軽くて丈夫なアルミ箔を利用した、耐久性の高い遮熱シートです。簡単施工で取り付けられるため、短納期で導入することができます。
2021年に実施したはるクールの実証実験では、折板屋根の倉庫にはるクールを施工することで、倉庫内の気温やWBGTが約2℃低下しました。WBGTが2℃低下すれば、WBGT基準値の区分が1つ変わります。
たとえば、WBGTが29℃の場合、低代謝率に分類される強度の身体作業しかできません。
しかし、はるクールを施工し、WBGTを27℃に下げれば、中程度代謝率の身体作業もできるようになります。
工場や倉庫の暑さ対策にお困りの方は、後付工事も可能なはるクールを導入しましょう。
→はるクールの製品ページはこちら
7.機材への暑さ対策
作業場所の温度が40℃を超えると、電気設備機器が故障したり、誤作動を起こしたりするリスクが高まります。
建物内に熱源設備がある場合は、機器や設備に遮熱シートを貼ることで、輻射熱放による故障・誤作動を防止することができます。
また、電気設備機器のある区画に間仕切りカーテンを設置し、空調効率を高める方法も効果的です。
建物内が熱くなると、従業員だけでなく機器や設備にも悪影響を及ぼします。機材の暑熱対策も忘れずに実施しましょう。
8.まとめ
倉庫や工場は構造上暑くなりやすい建物です。
従業員の熱中症や機械の故障・誤作動のリスクが高いため、暑さ対策や遮熱対策が欠かせません。
倉庫や工場の暑さ対策として、従業員に空調服を支給する方法や、間仕切りカーテンを設置し、空調効率を高める方法があります。
また、倉庫や工場の屋根に遮熱材・遮熱シートを施工すれば、効果的に内部の温度を下げることが可能です。
熱中症は「必ず防げる災害」です。従業員の熱中症や、熱で機械が壊れないか心配している方は、倉庫や工場の暑さ対策に取り組みましょう。
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