「猛暑の時期になると公園から子どもの姿が消えてしまう」
「駅前広場や歩道の暑さ対策を検討したいが、何から手を付ければよいかわからない」とお悩みではありませんか?
近年は夏の暑さが厳しさを増し、熱中症による救急搬送は2025年に過去最多を記録しました。「居心地が良く歩きたくなるまちなか」を目指すウォーカブルなまちづくりが全国で進む一方、夏の屋外は滞在そのものが難しくなりつつあります。
しかし、日射を遮る計画をまちの設計に組み込めば、夏でも過ごしやすい公共空間をつくることができます。
本記事では、公園・駅前広場・歩道といった公共空間の暑さ対策について、日かげをつくる方法の使い分け、電源・強風・設置許可といった実務課題への対応、先行事例と支援制度までを解説します。ぜひ参考にしてください。
\公共空間の暑さ対策のポイント/
はじめに、公共空間の暑さが利用実態にどのような影響を与えているかを整理します。
総務省消防庁の統計によると、2025年5月から9月の熱中症による救急搬送人員は105,510人と、調査開始以降で最多となりました。発生場所別では住居が最も多く、次いで道路が19,773人と全体の約2割を占めています。まちなかの移動や屋外での滞在そのものが、熱中症リスクと隣り合わせになっていることがわかります。
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」
夏のアスファルト路面は、表面温度が60℃を超えることもあるとされています。輻射熱(高温の路面や壁面から放射され、体に届く熱)は照り返しとなって歩行者に届き、気温以上の暑さを感じさせます。
出典:環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン」
公園でも事情は同じです。金属製の遊具は直射日光の下で表面が50〜70℃に達することがあり、各自治体がやけどへの注意を呼びかけています。夏の日中に公園や広場の利用が減ってしまう背景には、こうした暑熱環境があります。
出典:足立区「遊具などによるやけどにご注意ください」
国土交通省が推進する「居心地が良く歩きたくなるまちなか」づくりには、2026年5月末時点で402都市が賛同しています。歩行者中心の空間再編が各地で進む一方、夏の暑さはその前提を揺るがしかねません。
出典:国土交通省「『居心地が良く歩きたくなる』まちなかづくり」
実際、ウォーカブルなまちづくりに取り組む全国のエリアプラットフォームの将来ビジョンを分析した研究では、明確な暑熱対策を掲げた事例が見当たらなかったことが指摘されています。歩きたくなるまちを実現するには、日かげの計画をあらかじめ織り込む視点が欠かせません。
出典:北九州市立大学 小林敏樹「ウォーカブルなまちづくりを推進していく上で必要となる暑熱対策に関する考察」
環境省の「まちなかの暑さ対策ガイドライン」は、まちなかの暑さ対策の目標を、気温を下げることではなく「人が感じる暑さ=体感温度」を改善することに置いています。そのうえで、人が受ける日射を遮ることが最も効果的な対策と位置づけています。
出典:環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン」
体感の暑さを測る指標としては、WBGT(暑さ指数)が広く使われています。WBGTは気温・湿度・日射などの輻射熱を取り入れた指標で、環境省が全国の実況値と予測値を公開しています。
日射遮蔽の効果は実測でも確認されています。同ガイドラインでは、屋根の有無によるWBGTの差は日射の強い時間帯ほど大きく、最大で4〜5℃程度になるという測定例や、木陰では日なたに比べWBGTが約2℃、体感温度(SET*)が約7℃低くなるという結果が紹介されています。
一方、路面温度の上昇を抑える遮熱性舗装については、反射した日射が歩行者に届くため、歩行者の体感温度はかえって上がる場合があるという指摘もあります。それぞれの手法に特性があるため、「上から日射を遮る」対策と組み合わせて計画することが大切です。
出典:国土交通省 道路局「路面温度上昇抑制技術(遮熱性舗装等)」
▶体感温度を下げるオーニングの効果についてはこちら
公共空間に日かげをつくる方法は、大きく「緑陰」「固定式の日よけ」「可動式の日よけ」に分けられます。ここでは、それぞれの特徴と向いている場面を整理します。
街路樹や公園の樹木がつくる木陰は、日射を遮ると同時に蒸散作用で周囲の熱環境を和らげる、日かげづくりの基本です。景観やまちの魅力づくりにも寄与するため、多くの自治体で緑化の取り組みが進められています。
一方で、植えてから十分な樹冠に育つまでに年数がかかること、地下埋設物や見通しの確保などの理由で植栽できない場所があること、剪定をはじめとする維持管理が必要なことも知られています。緑陰を軸にしつつ、樹木を配置できない場所をどう補うかが計画上の論点になります。
東屋やパーゴラ、膜構造のシェードといった固定式の日よけは、常設で安定した日かげをつくることができます。休憩スペースや遊具まわりなど、日かげが欲しい場所が決まっているところに向いています。
ただし、構造物として耐風などの設計検討が必要になること、冬に日だまりが欲しい場所でも日射を遮り続けることは、あらかじめ考慮しておきたい点です。
オーニングをはじめとする可動式の日よけは、季節や時間帯に応じて開閉できることが特徴です。夏は日かげをつくり、冬は生地を収納して日だまりを確保するといった、通年での使い分けが可能です。
強風時には生地を収納することで風の影響を受けにくくできる反面、「誰がいつ開閉するのか」という管理運用が課題とされてきました。近年は風力センサーによる自動収納や遠隔操作といった技術の実証が進んでおり、この課題への新たな選択肢が生まれつつあります。詳しくは第5章でご紹介します。
このほか、微細ミストや保水性舗装、冷房の効いた屋内へ一時的に避難するクーリングシェルター(指定暑熱避難施設)なども、暑さ対策の選択肢です。いずれも単独で完結するものではなく、日射遮蔽を軸に組み合わせることで効果を発揮します。滞在時間や利用者層、管理体制に応じて、適材適所で使い分けることが大切です。
日よけの設置を公共空間で計画すると、住宅や店舗とは異なる課題に直面します。ここでは代表的な3つの課題と、解決の方向性を整理します。
公園や広場、歩道には電源がない場所が少なくありません。電動式の日よけやミストを導入しようとすると受電設備や配線の工事が必要になり、費用や工期が計画のハードルになることがあります。
この課題に対しては、太陽光発電とバッテリーを組み合わせた独立電源型の日よけという選択肢があります。配線工事が不要なため電源のない場所にも設置しやすく、停電時にも稼働できることから、防災の観点でも注目されています。
屋外に常設する日よけにとって、風への備えは避けて通れません。テントやシェードの類では、一般に風速10m/s前後が使用中止を検討する目安とされています。台風接近のたびに職員が現地で収納してまわる運用は、設置数が増えるほど負担が大きくなります。
可動式の日よけでは、風速センサーと連動して自動で収納する仕組みが実用化されつつあります。人手に頼らずに安全側の運用ができるかどうかは、機種選定の重要な確認ポイントです。
歩道上に日よけを設置する場合は、道路法32条に基づく道路占用許可が必要です。占用の基準や運用は道路管理者によって異なるため、計画段階での事前協議が欠かせません。2020年に創設された歩行者利便増進道路(ほこみち)制度のように、歩道上の滞在空間づくりを後押しする制度も整いつつあります。
出典:国土交通省「道路占用制度」
公園や広場でも、構造や規模によって建築確認などの手続きが必要になる場合があります。いずれもケースバイケースの判断となるため、所管部署やメーカーを交えた早めの協議をおすすめします。
▶オーニングの道路占用許可についてはこちら
▶自立式オーニング計画のポイント【デザイナー・設計者向け】についてはこちら
前章までの実務課題に正面から取り組んでいる例として、神戸市の取り組みをご紹介します。神戸市は、街路樹の整備が難しい市中心部の暑さ対策として公募型の共同研究制度を活用し、当社BXテンパルとともに屋外公共空間向けの可動式日よけの研究を進めています。
出典:神戸市記者資料「屋外公共空間での異常高温対策」(2025年7月)
2025年9月には、市役所南側の歩道に6m×4mの大型日よけを設置し、技術実証が行われました。ベースとなっているのは当社の大型オーニング「ニュースーパーマキシム スタンダードタイプ」で、遠隔操作や開閉状態の遠隔監視、風力・陽光センサー、タイマー、動作時の音声注意喚起といった機能を実装しています。
運用面では、風速10m/s以上が3秒間続くと自動で収納される設定とし、強風時に人手で収納にまわる負担を解消しています。2026年度には磯上公園や中山手交差点の交差点広場など市内9基に拡大し、検証が続けられる予定です。なお、日かげの効果を定量的に確かめる本格的な検証はこれから進められる段階です。
出典:神戸市長定例会見(2026年6月11日)
こうした動きは神戸市に限りません。杉並区では、住民発の社会実験をきっかけに公園へタープを常設化した例があり、タープの下ではWBGTが日なたより最大3℃ほど低く、利用者の約8割が効果を実感したと報じられています。公共空間の日かげづくりは、全国で一歩ずつ広がりつつあります。
出典:東京新聞「『子どもの遊び場に日陰を』杉並区の公園、タープで涼しく」
当社では、こうした屋外公共空間での実証で得られた知見をもとに、電源のない場所でも使えるオーニング専用ソーラーバッテリーユニット「ソルエレ」を含め、設置環境に合わせたご提案を行っています。
▶神戸市とのスマートシェード共同研究についてはこちら
▶大型オーニング「ニュースーパーマキシム スタンダードタイプ」の製品情報はこちら
▶ソーラーバッテリーユニット「ソルエレ」の製品情報はこちら
公共空間の暑さ対策には、国の支援制度を活用できる場合があります。ここでは代表的な2つの制度をご紹介します。
国土交通省の「まちなかウォーカブル推進事業」では、滞在快適性等向上区域(まちなかウォーカブル区域)内における道路・公園・広場などの一体的な整備が支援対象となっており、日よけや保水性舗装といった暑熱対策のための施設整備も含まれます。交付率は国費1/2が基本とされています。
出典:国土交通省「まちなかウォーカブル推進事業」
改正気候変動適応法に基づき、市町村長は冷房設備を有する施設などをクーリングシェルターとして指定できます。指定は全国1,400を超える市区町村に広がっており、熱中症特別警戒アラートの発表時には一般開放されます。屋内への避難と屋外環境の改善は対になる取り組みであり、日かげの整備と組み合わせることで、まち全体の暑さへの対応力を高めることができます。
出典:環境再生保全機構「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)について」
なお、支援制度の内容や採択要件は自治体や年度によって異なります。最新の情報は、国や自治体の窓口でご確認ください。
公園・駅前広場・歩道といった公共空間の暑さ対策は、体感温度を改善する「日射を遮る」計画が基本です。緑陰・固定式・可動式それぞれの特徴を踏まえ、場所と管理体制に合わせて組み合わせることが、夏でも使われ続ける空間づくりにつながります。
電源・強風・設置許可といった公共空間ならではの課題にも、ソーラー電源やセンサーによる自動収納、制度面の後押しなど、解決の選択肢が広がりつつあります。神戸市の実証のように、公民連携で一歩ずつ検証を重ねる進め方も参考になるのではないでしょうか。
当社BXテンパルは、日よけ製品の専門メーカーとして、公共空間の日かげづくりをお手伝いしています。「暑さ対策のことはテンパルに相談」を合言葉に、計画の初期段階からでも専門スタッフが対応いたしますので、お気軽にご相談・お問い合わせください。